気まま図書館

小説の感想、解説を書いていきます。

【長編】『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー【読了】

遅くなりましたが、ようやく、カラマーゾフの兄弟を全て読み終えました。 文庫本全部5巻にして、2000ページほどの大作でもあり、作者が長年温めてきた作品ともあって、読み終えるのにとても時間がかかりました。 最初読んでいる時は、かなりキリスト教色の強…

【長編】『カラマーゾフの兄弟3』フョードル・ドストエフスキー

もう長々とこの作品についての感想を書いていますが、ようやく第3巻を読み終えました。物語もいよいよ終盤に近づいてきた模様で、メインキャラクターである長男のドミートリィが父殺しの罪に問われ、裁判にかけられる場面で3巻は終了しています。 父親が殺さ…

『カラマーゾフ』を読む⑦

光文社古典新訳文庫版『カラマーゾフの兄弟』を読み進めていく中での感想などを書いていくコーナーです。 全5巻中、3巻の中盤くらいまでを読み進めました。 いよいよ、長男ドミートリィの気が狂い始めたような感じになっていきます。 父親フョードルの家に侵…

「カラマーゾフを読む」⑥

光文社古典新訳文庫版『カラマーゾフの兄弟』を読みながら語るコーナーです。 第3巻の100ページほどを読み終えました。 ゾシマ長老が天に召されて、心がやさぐれてしまった三男のアレクセイは、友達のラキーチンとともに悪女として語られているグルーシェニ…

【長編】『カラマーゾフの兄弟2』フョードル・ドストエフスキー

カラマーゾフ2巻目読み終えました。 まだ物語の序盤ではありますが、2巻ラストのゾシマ長老の回想などはかなり奥深いテーマを感じます。 この、アレクセイが書き記したとされているゾシマ長老の死に際の回想録は、これから起きる本書の中での現実の出来事と…

「振り返りみたいなもの」

ブログを初めて、もうすぐで2ヶ月になります。 早いものでして、このブログのおかげで読書することを意識することもできましたし、その反面、読書するのにプレッシャーを感じたりすることもありました。 なんのためにしているかという理由も定かではありませ…

『カラマーゾフの兄弟』を読む⑤

光文社版「カラマーゾフ」第2巻の終盤まで読み進めました。 第2巻は物語の中でもかなり難解な場面が多く登場しますが、それゆえに「カラマーゾフ」の真骨頂のような面も垣間見えたりするわけです。 具体的にはカラマーゾフ兄弟の次男であるイワンが頭の中で…

『カラマーゾフの兄弟』を読む④

昨日、小説家になろうのサイトにアップされている、ヤマダヒフミさんという方が書かれたドストエフスキーについての評価を読んでいました。 この方、経歴とかは知りませんが、かなり確信をついたものを書いておられる印象で、特にシェイクスピアとドストエフ…

『カラマーゾフの兄弟』を読む③

光文社版『カラマーゾフの兄弟』2巻に突入しました。 2巻のでは主人公アレクセイの尊敬するゾシマ長老がメインと章が多かった記憶です。 ゾシマ長老の死は、アレクセイの神への信心を揺らがせます。アレクセイは物語の中でも唯一といっていいほどの純粋さを…

【長編】『カラマーゾフの兄弟1』フョードル・ドストエフスキー

光文社古典新訳版の『カラマーゾフの兄弟』1巻を読み終えました。 「カラマーゾフ」は全部で5巻ありますが、この第1巻の時点でメインの登場人物はあらかた出てきます。 なのでこの1巻の展開をしっかりと理解しておく事で、後の話が読みやすくなりそうです。 …

『カラマーゾフの兄弟』を読む②

『カラマーゾフの兄弟』はタイトル通り、カラマーゾフの姓を請け負った三兄弟をメインとした話になります。長男のドミートリィ、次男のイワン、そして末っ子のアレクセイは兄弟でありながらも育ちや性格が違っており、それでもなお貪欲で道化を演じる父親の…

『カラマーゾフの兄弟』を読む①

あらゆる文学作品を漁っていると、どんどんとレベルの高いものが目に見えて仕方ありません。ネットで調べたりすると、たとえばAmazonでは関連作品に沢山興味深い小説がおすすめとしてあがってきます。 私は3月頃に哲学の勉強をほんの少ししたのですが、たっ…

【番外】ふりかえりとかこれからのこととか

最近、ブログを更新する頻度がめっきり減ってしまい、焦りのような気持ちが大きいです。 読書自体を嫌になったわけではなく、むしろ量自体は増えているのですが、いかんせん夜の一人の時間が減ってしまい、なかなかブログを書く時間も取れなくなっています。…

【短編】『檸檬』梶井基次郎

梶井基次郎の代表作です。才能のある作家でしたが、肺結核により31歳で病没しました。いくつかの作品を読んだことがあるのですが、感覚に訴えかけるような文章が独自の世界観を形成しています。 『檸檬』は梶井基次郎の中でも特に有名な作品ではないでしょう…

【短編】『恐怖』谷崎潤一郎

とても短い谷崎潤一郎の短編小説です。 1913年に大阪毎日新聞に掲載されたようです。 内容は至って簡単。 谷崎と思しき主人公が、乗り物酔いに対しての苦悩と恐怖を抱いているという、令和の現代からすればある意味滑稽な内容に見えなくもないです。 この話…

【短編】『杜子春』芥川龍之介

芥川龍之介といえば、『羅生門』を始めとし、教科書にも採用される比較的読むのに苦労しない短編が多いイメージです。 今作も昔の唐の国を舞台にはしていますが、わりと読みやすく、子どもにも読めそうな内容です。 主人公である杜子春は、貧困に陥っている…

【短編】『日々移動する腎臓のかたちをした石』村上春樹

村上春樹の『東京奇譚集』の第三作目です。 前回、前々回と引き続き村上春樹のレビューをすることになります。 久々に読むとやっぱり面白い村上春樹。 読みやすい文章に、何気ない現実。そこにほんのりミステリアスな雰囲気を携えた世界が魅力的です。 村上…

【短編】『ハナレイ・ベイ』村上春樹

昨日に引き続き、村上春樹の短編を紹介します。 タイトルにありますハナレイとは、ハワイのカウアイ島の町の名前だそうです。サーフィンやフラダンスが盛んな町で、日本でもサーファーがよく訪れるところとなっています。 今作はそのハナレイが舞台となりま…

【短編】『偶然の旅人』村上春樹

現代において、日本で代表的な作家を一人挙げるとしたら、村上春樹の名前は候補になるのではないでしょうか。 私たち20代の人間でも名前くらいは聞いたことある人は多いかと思います。 巷ではノーベル文学賞を受賞するのではないかといった、そんな噂も流れ…

【短編】『空の怪物アグイー』大江健三郎

小説には、その作家が強く意識しているものが物語によく登場します。 たとえば浅田次郎でしたらギャンブルが好きですので、パチンコ屋の店内とか、競馬場とかが場面として扱われるイメージです。 小川洋子の『博士の愛した数式』を読むと、あからさまにこの…

【長編】『コインロッカーベイビーズ』村上龍

多忙により読書をする時間がまともにとれないということで、昔愛読していた小説を語っていこうかと思います。 村上龍が作家デビューしてまもない頃に執筆したこの『コインロッカーベイビーズ』ですが、話の内容や、1972年頃に社会問題となっていた、産んだ赤…

【番外】「振り返りみたいなもの」

2021年にもなり、今更ブログを書きはじめることになりまして、少し時代遅れだという声が聞こえなくはないのですが、そもそも私自身が時代の流れにうまく乗れる生き物でもないものですので、古いも新しいもあったものではありません。これまでに載せてきた記…

【読書中】『カラマーゾフの兄弟』/フョードル・ドストエフスキー

あまりにも長い作品ですので、読み終えるまでにこうして何度か感想を考えていかないと、まとめきれないような気がしました。 しかしそれをしたとて、この文学界の大傑作とも言われているドストエフスキーの生年最後の作品は、うまく語れる自信もありません。…

【長編】『西海原子力発電所』井上光晴

井上「靖」だと思って図書館で借りた本でしたが、私の空目でして、井上「光晴」でした...。 井上光晴の名前は聞いたことがあったのですが、彼が作家という認識も朧げなものでして、実際手にとって数ページ読み進めて、そういえば井上靖ってどんな作家だった…

【中編】『セブンティーン』大江健三郎

皆さんは17歳の頃の、自分の感性や価値観を覚えていますか? 私はなんとなくあんな感じだったなとか、その当時の情景を記憶から掘り下げたときの独特な懐かしさから思い出せるものもあります。 10代といえば皆さんもご存知、多感な時期の真っ最中で、10代独…

【中編】『飼育』大江健三郎

このブログをはじめた頃の話です。 私は大阪市の1番大きな図書館で、文庫本にして800ページはありそうな、大江健三郎の自選短編集を借りました。 今回はその作品集にある一つをとりあげ、 大江文学の初期の作品、『飼育』について語ろうかと思います。 この…

【長編】『博士の愛した数式』小川洋子

このブログを開設してから、ひたすらに近代文学のレビューが多かったので、21世紀の小説について語ろうかと思います。 というわけで、今回は小川洋子です。このブログでは初めての女性作家ですね。 現代の女性作家といえば、恩田陸や宮部みゆき、角田光代な…

【短編】『刺青』谷崎潤一郎

谷崎潤一郎の短編小説です。 谷崎潤一郎の文学作品での基本的なコンセプトは、小悪魔的な女性についてのものが多いです。 妖しく繊細な美人が男性を食い物にし、弄ぶsadisticなシーンが目立ちます。 そこには谷崎が一種のフェチズム的な考えを女性に抱いてい…

【短編】『花火』永井荷風

永井荷風(1879〜1959)の短編小説です。 小説というよりかは、とても短い随筆のような形になっています。 文庫本で15ページほどの短い内容でありながら、明治時代の日本の激動に思いを馳せていく、主人公の心情が描かれています。 パリ講和条約の記念から打ち…

【短編】『死者の奢り』大江健三郎

大江健三郎の初期のデビュー作です。 私、大江健三郎がかなり好きで、ちょくちょく読んでいます。 5.6年ほど前でしょうか、『個人的な体験』という、これまた初期の作品を読んでから、一気に彼の作品に魅了されるようになりました。 巷での大江健三郎の評価…