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小説の感想、解説を書いていきます。

【中編】『友情』武者小路実篤

 

突然ですが、私は恋愛が苦手だったりします。

 

 

 

理由はいろいろあるとは思うのですが、自分の場合は、人から人へ、自分から湧き立つ相手への好感度をぶつける行為が、居た堪れなくなりすごく苦手に感じたりします。

 

 

だからこそ恋愛というものは至極ロマンめいたやり取りの一つとして、創作物には欠かせないものとなっていますが、その恋愛の大半は実らないものであるのではと、そんな想像も働いてしまい、げんなりするのもあるわけです。

 

 

そしてこの作品、武者小路実篤が1919年に発表した『友情』も、タイトルから想像できる内容とは打って変わって、主人公が一目惚れした女性に恋心を奪われてしまうものとなっていおります。

 

 

基本的には地の文で話は進みますが、出だしの自序で、結婚のことについての語りが少しだけ入っています。

 

 

ああ、これは恋愛をテーマとした小説で、しかも武者小路自身が、読み手を強く意識してメッセージを含んでいるものだなと、そんな忠告にも読めるものです。

 

 

そのメッセージの対象は、武者小路が有志とともに開村した共同体である「新しき村」で活動する若手たちでした。

 

 

友達や恋人の人間関係、勉強への意識、野望、若い頃にはそれらのことでつまづく人が多いです。

 

 

それは今も昔も変わらないそうで、『友情』はそんな若者に向けてのメッセージだったのでしょう。

 

 

およそ100年前の作品ではありますが、全くもって色褪せない、現代の若者にも通ずる一冊です。