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小説の感想、解説を書いていきます。

『カラマーゾフの兄弟』を読む⑤

光文社版「カラマーゾフ」第2巻の終盤まで読み進めました。

 

第2巻は物語の中でもかなり難解な場面が多く登場しますが、それゆえに「カラマーゾフ」の真骨頂のような面も垣間見えたりするわけです。

 

具体的にはカラマーゾフ兄弟の次男であるイワンが頭の中で創作した「大審問官」の内容を三男のアレクセイに話す場面と、2巻終盤の、修道院の長老であるゾシマが亡くなる直前に語った、自分の生い立ちなどがあたります。

 

この辺はドストエフスキー特有の、神がかり的な世界が発展して、読者は誘われるか、またもや内容の変化についていけなくなるかの2つとなります。

 

おそらく初めてドストエフスキーに挑戦した人も、1巻まではなんとか読めるかもしれませんが、この辺りの冗長じみた語りによくわからなくなる人も多いのではないかと思います。


基本的にドストエフスキーの物語のテーマは「神はいるのか」といったものになります。次男のイワンは博識であり、キリスト教が蔓延する社会の中でも自論を保ち続けるようなリアリストでもあります。

 

その彼が自問自答の中で作り上げた物語が「大審門官」であり、イワンの神の存在についての自身の答えが書かれていると考えても良さそうです。

 

そしてゾシマ長老は、三男アレクセイに長男ドミートリィを探し出すことを何度も命じます。

 

その理由は後の展開を見れば明らかになります。

 

今回の二人の長い話も、現段階ではこれからの物語の中では中盤にすぎませんし、この話がのちにどう生きるのか楽しみです。