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小説の感想、解説を書いていきます。

【長編】『博士の愛した数式』小川洋子

 

 

このブログを開設してから、ひたすらに近代文学のレビューが多かったので、21世紀の小説について語ろうかと思います。

 

 


というわけで、今回は小川洋子です。このブログでは初めての女性作家ですね。

 

 


現代の女性作家といえば、恩田陸宮部みゆき角田光代などがあげられます。

 


小川洋子もまた彼女らと同じく代表的な女性作家ですが、自分は今回初めて彼女の作品を読みました。

 

 

女性作家といえば書き手としての目線もまた男性とは違っており、

今回の作品だとシングルマザーである主人公の視点や、

親子としての日常的なやりとりなど、

基本登場人物の行動は互いが助け合い、

愛情を分かち合う、そんな温かみが強く出てくる傾向にあると思います。

 

 

反対に男性作家といえば、どちらかといえばテーマに忠実であったり、どこか野心めいていたりと、人々の触れ合いはあくまでそのテーマに沿った通過点でしかないイメージです。

 

 

 

博士の愛した数式』は、記憶障害を持った天才数学者である老年の博士と、その家に家政婦として雇われた主人公がはじめはお互いに戸惑いながらも、少しずつ絆を深めていくストーリーです。

 

 

結局、博士の80分ごとにリセットされる記憶障害はなんだったのか、

 

主人公と博士の義姉との激しい言い争いに対して博士が提示した数式はどういう意味があったのか、

 

博士はどうしてルート(主人公の息子)の誕生日が終わった後に入院することになったのか、

 

色んなところで疑問が湧いてきますが、あくまでもこの小説にはそういった事象の出来事を解説することなく、主人公の一人称で話が進みます。

 

 

おそらく著者はこれからの説明が話を進めていく上で野暮ったくなるのを避けたのだと思います。

 

 

 

話としてもちょうどいい長さですし、最後は少し駆け足気味ではありましたが、普段読書慣れしていない人にも勧められそうな一冊です。