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小説の感想、解説を書いていきます。

小説

【短編】『檸檬』梶井基次郎

梶井基次郎の代表作です。才能のある作家でしたが、肺結核により31歳で病没しました。いくつかの作品を読んだことがあるのですが、感覚に訴えかけるような文章が独自の世界観を形成しています。 『檸檬』は梶井基次郎の中でも特に有名な作品ではないでしょう…

【短編】『恐怖』谷崎潤一郎

とても短い谷崎潤一郎の短編小説です。 1913年に大阪毎日新聞に掲載されたようです。 内容は至って簡単。 谷崎と思しき主人公が、乗り物酔いに対しての苦悩と恐怖を抱いているという、令和の現代からすればある意味滑稽な内容に見えなくもないです。 この話…

【短編】『ハナレイ・ベイ』村上春樹

昨日に引き続き、村上春樹の短編を紹介します。 タイトルにありますハナレイとは、ハワイのカウアイ島の町の名前だそうです。サーフィンやフラダンスが盛んな町で、日本でもサーファーがよく訪れるところとなっています。 今作はそのハナレイが舞台となりま…

【短編】『空の怪物アグイー』大江健三郎

小説には、その作家が強く意識しているものが物語によく登場します。 たとえば浅田次郎でしたらギャンブルが好きですので、パチンコ屋の店内とか、競馬場とかが場面として扱われるイメージです。 小川洋子の『博士の愛した数式』を読むと、あからさまにこの…

【長編】『コインロッカーベイビーズ』村上龍

多忙により読書をする時間がまともにとれないということで、昔愛読していた小説を語っていこうかと思います。 村上龍が作家デビューしてまもない頃に執筆したこの『コインロッカーベイビーズ』ですが、話の内容や、1972年頃に社会問題となっていた、産んだ赤…

【読書中】『カラマーゾフの兄弟』/フョードル・ドストエフスキー

あまりにも長い作品ですので、読み終えるまでにこうして何度か感想を考えていかないと、まとめきれないような気がしました。 しかしそれをしたとて、この文学界の大傑作とも言われているドストエフスキーの生年最後の作品は、うまく語れる自信もありません。…

【中編】『セブンティーン』大江健三郎

皆さんは17歳の頃の、自分の感性や価値観を覚えていますか? 私はなんとなくあんな感じだったなとか、その当時の情景を記憶から掘り下げたときの独特な懐かしさから思い出せるものもあります。 10代といえば皆さんもご存知、多感な時期の真っ最中で、10代独…

【中編】『飼育』大江健三郎

このブログをはじめた頃の話です。 私は大阪市の1番大きな図書館で、文庫本にして800ページはありそうな、大江健三郎の自選短編集を借りました。 今回はその作品集にある一つをとりあげ、 大江文学の初期の作品、『飼育』について語ろうかと思います。 この…

【長編】『博士の愛した数式』小川洋子

このブログを開設してから、ひたすらに近代文学のレビューが多かったので、21世紀の小説について語ろうかと思います。 というわけで、今回は小川洋子です。このブログでは初めての女性作家ですね。 現代の女性作家といえば、恩田陸や宮部みゆき、角田光代な…