気まま図書館

小説の感想、解説を書いていきます。

【中編】『セブンティーン』大江健三郎

 

 

皆さんは17歳の頃の、自分の感性や価値観を覚えていますか?

 

私はなんとなくあんな感じだったなとか、その当時の情景を記憶から掘り下げたときの独特な懐かしさから思い出せるものもあります。

 

10代といえば皆さんもご存知、多感な時期の真っ最中で、10代独特の感覚の不安定感や、喜怒哀楽のコントロールの難しさなどに悩まされる人も多いのではないでしょうか。

 

そして時が進んでいくごとに、それらは少しずつ塗りつぶしていくようになくなってしまい、大人の人格が形成されます。

 

よく10代は羨ましい、またあの頃に戻りたいと言った声を多々聞こえてきますが、私は戻りたいなんて露も思ったことはありません。

 

思い出すほどに、青春の日々というのは、小難しい自分が浮き彫りになっていくばかりで、自己責任もなければ自由もまた狭まっている世界、羽を伸ばして生きていくことの難しかった世界が垣間見えるのです。

 

今回、大江健三郎の『セブンティーン』には、私の持っている青春とは少し違う形で、そして羨ましいものでもない世界となっております。

 

自瀆にふけ、政治的な思想を持て余し、あらゆる劣等感を携えている主人公。


そんな彼が、看護師として働いている姉と政治についての話で喧嘩をしたり、体力テスト中に小便を漏らしたり、学力テストで居眠りをしたりと、なかなかうまく軌道に乗ることのできない学生生活を送っています。


鬱屈したコンプレックスに政治思想を交えた彼の内面が、その政治思想を生かすことによってコンプレックスを打破し、新たな自分に生まれ変わる物語です。

 

これを読んで思ったのは、やはり若者というものは、いつの時代も、何かパワーを持て余しているものなのだなと感じました。

 

そんな、どこかパワフルで繊細で小難しい主人公の独壇が続く小説、是非読んでみてはどうでしょうか。

 

 

では。