【短編】『ハナレイ・ベイ』村上春樹
昨日に引き続き、村上春樹の短編を紹介します。
タイトルにありますハナレイとは、ハワイのカウアイ島の町の名前だそうです。サーフィンやフラダンスが盛んな町で、日本でもサーファーがよく訪れるところとなっています。
今作はそのハナレイが舞台となります。
ハナレイで息子を亡くした母親が、現地へ向い、さまざまな人と交流をして、日本に帰ってくる。
その中で風来坊だった息子のことや、勉強をしながらもドロップアウトしてピアノに専念した若い頃の自分を思い出していきます。
途中で息子ほどの年齢の日本人の若者二人組に出会い、何も知らないで日本から来た彼らに対して、やれやれといった調子で彼女は手助けをします。
村上春樹の小説らしく、文章は軽々しいようなもので、ビーチを舞台としたことも相まって読みやすいですが、どこか得体の知れないような影もまた垣間見えます。
面白い短編小説全般に言えることですが、やはり文章に冗長めいたところはなく、はっきりと伝えたいところ、曖昧な答えのないところも無駄がありません。
現代の短編純文学のお手本といったところでしょうか。
村上春樹らしい話ですが、生々しいセックスのシーンなどはありませんので、これまた村上春樹初心者におすすめの物語です。